家電を支える電子機器部品製造。射出成形の役割とメリットを解説

近年、家電業界では小型化・軽量化・スマート化が加速しており、それに伴い電子機器部品の精度や材料選定に関するニーズが高まっています。特に、内部に組み込まれる絶縁部品や支持構造などは、高精度で安定した成形が可能な技術が求められています。
その中でも注目されているのが、弊社も得意としている射出成形(樹脂を溶かして型で量産する製法)による樹脂部品の製造です。複雑な形状や薄肉構造にも対応でき、かつ大量生産でも品質が安定するこの技術は、コスト削減も望める点も含めて、家電製品の中核部品にも広く活用されています。
本記事では、家電製品における電子部品製造の重要性と、その裏で支える射出成形の役割、受託先選定の観点、製造現場のトレンドなどを分かりやすくお伝えします。
電化製品と樹脂部品の関係

家電製品やAIも搭載したスマート機器、通信デバイスに欠かせない存在――それが電子機器・電子部品です。
電子機器は一般に、電気を使って信号処理や動作制御を行う装置全般を指し、内部に「回路基板」「センサー」「コネクタ」「筐体部品」など、多くの電子部品が構成要素として集まっています。当社のような樹脂成形の会社では、電子部品の製造を担うことが一般的で、必要に応じて、装置の組み立てまでを請け負うこともあります。
電子機器・部品の製造では、設計・(部品の選定)・調達・加工・組立・検査等といった一連の流れで、製品を形にしていく工程を踏みます。電子機器・部品の製造はこれまでは一般に量産性が求められるケースの方が多かったのですが、近年では、多品種小ロット/試作対応や短納期対応、さらには、特定の市場において高精度な品質管理体制が求められるケースが増えており、単なる「大量生産の工場」ではなく、柔軟かつ一貫対応が見込める製造体制が評価される時代になってきております。
また、製品の小型化や複雑化が進む中で、精密成型や高精度な組立を可能にする技術――たとえば射出成形(プラスチック樹脂を高温で溶かし、金型に流し込んで固める加工法)や、金属端子やナットなどをあらかじめ金型にセットして樹脂で一体成形するインサート成形(金属×樹脂等の異素材の一体化を可能にする射出成形の応用技術)が多用されるようになっています。インサート成形は、樹脂部品の中に強度や導電性を付加する際に有効で、家電製品では特に、端子まわりの固定部や構造指示部に用いられることが多くなっています。射出成形/インサート成形で製造される代表的な部品を紹介します。
射出成形で製造される代表的な部品
- 外装・操作パネル周辺の樹脂カバー(スイッチ・表示部など)
- 絶縁・保持用仕切り板(内部電装部品の保護や間仕切り、インシュレーター、スペーサーなど)
- 基盤ホルダーやスペーサー(プリント基板[電子回路基板]の固定・浮かせ位置の保持、スタッド[スタッドオフ]など)
- 小型フレーム部品や支持具(軽量かつ剛性を求める構造材、スタッド、ガイドリブ、ボス、スナップフィットなど)
インサート成形を活用する機能部品
- 金属端子を一体成形したコネクタハウジング(電気接点部の強度確保)
- ナット・ネジ受け付きの固定部材(組立時の耐久性向上)
- 金属芯入りの支持構造パーツ(強度+寸法安定性を両立)
たとえば、洗濯機や冷蔵庫の内部にあるスイッチ固定用のホルダーや、プリント基板を支持するスペーサー類、電気絶縁を目的とした仕切り板なども、こうした技術によって製造されています。これらは単なる「部品」ではなく、製品全体の安全性や使い勝手、さらには外観品質に直結する重要な存在です。このように、射出成形・インサート成形は家電・電化製品やこれを構成する電子機器/部品の製造において重要な役割を担っており、製品設計時点からその構造・材質・強度にまで配慮することで、量産性・コスト・品質を最適化できます。
次章では、樹脂成形加工によって製造される部品に求められる特性や設計上の注意点を、現場目線でさらに深掘りしていきます。
家電製品の部品製造における要求特性

家電製品に使用される電子機器部品には、コストダウンが重視されると思われがちですが、人間の生活に隣接する製品となるため、機能性・安全性・信頼性など、複数の観点から厳しい性能要件が求められます。とくに射出成形やインサート成形で製造される樹脂部品においては、単に「形ができればいい」というものではなく、使用環境や設計内容に応じた素材・構造・加工精度が求められます。
家電製品/電子機器に使われる電子部品に求められる特性
- 絶縁性・難燃性
電化製品となるため、電装部品と接触する可能性がある箇所では、絶縁性(電気を通さない)を持つ樹脂材質の利用が求められます。また、万が一の発熱やトラブルに備えて難燃グレード(UL94V-0など)の樹脂を使うことも一般的です。
- 寸法精度・反りの抑制
家電内部の部品は軽量化や構造の仕様を満たすために様々な形状な部品があります。薄肉や長尺の部品では、成形時の収縮や変形(反り)が発生しやすく、これが組立精度や操作感に直結します。そのため、金型設計・材料選定・成形条件を最適化することが不可欠であり、技術力が試されます。
- 耐熱性・耐寒性
家電内部の電子機器/電子部品は、高温になる電装基板の近くや、低温環境(冷蔵庫内部など)でも安定した機能をしなければなりません。使用環境に応じて耐熱樹脂(PBT・PA・PCなど)を選ぶことが重要です。
- 強度・剛性・耐衝撃性
構造支持部やスナップフィット構造では、折れない・割れない設計が要求されます。応力が集中しやすい形状では、リブ構造を入れたり、樹脂材料にガラス繊維を混ぜた強化タイプの材料に切り替えることもあります。
- 外観品質・表面仕上げ
スイッチ周辺や表示部パネルのように目に触れる部分では、表面のツヤ、成形時のヒケやバリがないことが求められます。OEM製品の場合には、意匠性に関わる問題に発展する場合もあるほか、「製品に対する印象」に直結するため、検査工程や仕上げ工程の重要性も高いです。
実務者視点でのポイント
こうした要求特性は、単体の部品としての性能だけでなく、組立性・量産性・検査性にまで影響を及ぼします。たとえば「スペーサーの高さ精度が出ていない」といったわずかなズレが、最終組立での不良や電気的な接触不良を引き起こす可能性もあります。
また、インサート成形部品の場合は、金属との接合部での剥離やズレを防ぐために、金属部品との密着性や機械的ロック構造の設計も求められます。
今後、家電製品に使われる部品はさらに小型化・高密度化が進み、部品設計の自由度や成形技術の限界を突き詰めるような要求が増えていくことも予想されます。家電・電子機器の進化に応えるためには、製品設計の初期段階から成形の知見を持つ製造パートナーと連携し、仕様のすり合わせを行うことが重要です。
根本電工は、30t~100tの射出成型機を複数台保有しており、30cm程度の中型サイズの部品にも対応できます。特に強みとしているのは、中小型の精密部品や複合構造部品であり、家電内部に使われるスイッチホルダーや端子周辺部品、耐熱・絶縁を求められる仕切りパネルなどは、まさに当社が得意とする領域に該当します。また、インサート成形については最新鋭の設備を導入しており、金属部品と樹脂の一体化によって強度・導電性・軽量化を両立した設計が可能です。加えて、幅広い業界の樹脂成形部品の製造実績から、設計・VE提案を行わせて頂いた実績もございます。もし電子機器・家電部品の製造のお困りごとがあれば、お気軽に下記ボタンより当社までご相談ください。
少し話がそれましたが、次章では、そうした高精度な部品をどのような基準で外注先に委託するべきかという観点から、実務でも役立つポイントを解説していきます。
電子機器/家電部品の外注先を選ぶポイント

電子機器や家電製品に使われる部品の製造は、大手メーカーで内製されることもありますが、多くはOEMにてTier1とも呼ばれる大手~中堅製造業によって製造される場合が多かったです。一方で現在では、製品開発・研究開発に注力し、内製しないケースが増えてきています。そこで、現状電子部品の製造は、専門的な技術を持つ外部パートナーへの外注(委託)を前提とする場合がほとんどで、特に射出成形やインサート成形のような精密加工を伴う工程では、金型製作や成形ノウハウ、材料管理などが製品の品質や納期に直結するため、「そのサプライヤーに任せるか」が最終製品の成否を分ける要因となります。
外注先を選定する際は、単に価格や立地(輸送コスト)といった条件だけでなく、加工技術・対応力・コミュニケーションの精度など、総合的な判断が必要です。以実際に製造委託を検討する際に確認しておきたいポイントを挙げてみます。
外注先選定で確認すべきチェックポイント
- 加工技術と設備の有無
- インサート成形や薄肉成形など、自社製品の設計仕様に要する加工技術に対応しているか
- 金型内製可否や、成形機のサイズレンジ・設備保有台数などは十分か
- 少量・試作への対応力
- 家電部品は頻繁なモデルチェンジが予想されるため、小ロット生産や試作対応の柔軟性があるかどうか
- 設計面での負担軽減に向けて、試作段階から相談できる体制があるかどうか
- 納期と生産スピード
- リードタイムや生産体制の余力が十分か。(「量産立ち上げ時に遅れる」「修正後の再納入が間に合わない」といったトラブルを防ぐため)
- コミュニケーションと提案力
- 製品設計に関する相談や、材料提案・VE(コストダウン)提案が可能かどうか
- 設計/ラフ段階からの相談に対応してくれるかどうか。
また、あらかじめ製品実績を確認することも重要です。しかし、多くのOEM部品等は機密保持等によりメディア等には掲載ができていない場合が多いため、メールや対面等のコミュニケーションで確認することが必要な場合がございます。家電や電子機器等の量産実績がある会社であれば、業界特有のトラブルや品質基準をあらかじめ理解しているため、やりとりもスムーズにできる可能性が高いです。また、自動車業界や医療業界等の部品製造の実績も有する会社は、さらに一段上の品質管理基準で日常的に製造/量産を行っていることが多いため、さらに安心感を高められるポイントとなります。
射出成形部品が家電製品を支える理由とは?

家電製品に組み込まれる電子機器部品は、見た目こそ小さくても、製品の性能や安全性に直結する重要な役割を担っています。そうした部品の多くが、射出成形によって製造されているのはなぜなのか。この章では、家電製造における射出成形技術の意義とメリットについて解説します。
家電製品で射出成形部品が活躍する理由
- 精密な形状再現が可能
家電製品/電子機器内部の電子部品に求められる複雑な構造、微細な形状、薄肉設計──こうした「設計上の理想形」を、量産の中でも安定して実現できるのが射出成形の最大の特徴です。たとえば、ボタンの押し感に影響するストローク部や、LEDパネル裏の極細リブ構造など、1mm単位の制御が求められるパーツも安定して成形可能です。
- 成形と機能の一体化
「見た目の外装+内部の保持構造」や「表示パネル+爪による固定機構」など、複数の機能を1つの部品に集約しやすいのも大きな利点です。これにより部品点数を削減し、組立工数やコストの最適化につなげることができます。
- コストと生産性のバランスに優れる
製品は最終的に大量生産が求められますが、1回の成形サイクル(1ショット)で、溶かした樹脂を金型に流し込み、冷却・取り出しまでを自動で完了する射出成形は、1部品あたりの成形にかかる時間が数十秒以下と非常に短く、生産性とコストパフォーマンスを高次元で両立できます。
- 材料の選択肢が豊富
耐熱性・難燃性・弾性・透明性など、家電に必要な性能ごとに多様な樹脂が使えるため、製品仕様に応じた柔軟な設計が可能です。たとえばPBT(耐熱・絶縁)、PC(透明性)、PA(剛性)など、樹脂の特性を活かした材料選定により、用途に応じた最適化が行えます。金属に比べて軽量で成形自由度が高く、電気を通さないという特性から、特に内部構造部や絶縁パーツ、外装カバーなどにおいて樹脂は優位性を発揮します。一方で、高強度や放熱性が必要な箇所では金属部品との組み合わせ(インサート成形など)が用いられることも多く、性能とコストのバランスを見ながら適材適所で設計することが重要です。
また、金属部品との複合成形を可能にするインサート成形を併用すれば、強度や導電性といった機械的な性能も一体で付加/利活用することができ、たとえば端子周辺の補強やネジ固定部の耐久性向上といった要件にも対応できます。
このように、射出成形は単なる成形技術ではなく、設計自由度・生産効率・機能集約性を同時に実現する手段として、家電製品の開発現場では欠かせない存在となっているのです。
実際に電子部品/家電部品を外注する際の注意事項

家電/電化製品や電子機器の部品製造では、設計段階から外部パートナーに製造を委託するケースが一般的になってきています。射出成形やインサート成形のように、専用の金型や設備、成形ノウハウが必要な技術では特にその傾向が強く、自社ですべてを内製するのは現実的ではありません。
しかし、外注には「設計とのすり合わせ不足」「仕様の伝達ミス」「試作・量産切り替え時のトラブル」など、注意すべきポイントも多くあります。ここでは、委託先が決まった後の失敗を避けるために、注意すべきポイントをまとめます。
- 設計図・3Dデータの共有と精度・寸法等の設計仕様の適切な伝達
図面データがあっても、金型製作に必要な寸法公差や樹脂流動性まで考慮されていないケースは多く、成形現場とのすり合わせが必要不可欠です。STLやSTEPといった3Dデータ形式の対応可否、補足資料の有無を確認しましょう。
- ロット数量・納期の現実性の担保
「試作10個」や「初回ロット300個」など、数量感と納期スケジュールの見積もりは、設備の稼働計画や金型手配にも大きく影響します。希望だけでなく、スケジュールと費用のバランスを事前に確認しておくことが重要です。
- 材料手配・グレード指定の明確化
「ABSでOK」など、あいまいな表現で伝えてしまうと、成形側での材料グレード選定が難しいことがあるほか、製品が要求仕様を下回る可能性もでてきます。難燃性グレードや食品接触グレードなど、明確なスペックを提示することで、トラブルのリスクを低減できます。
- 試作〜量産へのスムーズな切り替え体制
試作までは対応していても、量産切り替え時に金型の耐久性や設備能力の問題で対応不可になるケースがあります。最初から「量産前提」で打ち合わせができるパートナーを選ぶことが、スムーズな立ち上げの鍵です。
電子機器/部品の製造委託でよくある疑問点
-
射出成形の試作は1個からでも依頼できるのだろうか?
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可能な場合が多いですが、金型を起こす必要があるため費用は比較的高くなる傾向があります。一方で、簡易金型や3Dプリンタなどが活用できる可能性もあり、予算や目的に応じた試作手段を委託先と検討することで、コストダウンも図れます。
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金型は支給できるんだけど、製造のみ委託可能できるだろうか?
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支給金型での製造も対応できる会社が多いです。ただし、金型の仕様確認・修正調整が必要な場合があるため、事前の情報共有が重要になります。
-
材料選定がまでできていないけど、頼んでも大丈夫だろうか?
-
多くの成形加工メーカーが専門性を持っているため、製品の使用環境や求められる物性に応じて、PBT・PC・PAなどの候補材を適切に提案してもらえます。VE提案も含めてご相談いただけます。
このように、外注では「出せば終わり」ではなく、仕様・工程・品質の三位一体でのすり合わせが不可欠です。根本電工では、設計段階からのご相談・図面レビュー・材料選定支援・試作対応まで一貫サポートが可能です。
まとめ:電子機器製造と家電部品受託のこれから

本記事では、家電製品に使われる電子機器部品の製造について、その基本的な構造や求められる性能、製造工程、そして射出成形・インサート成形といった成形加工技術の活用について幅広くご紹介してきました。
家電業界では近年、小型化・複雑化・多機能化といった設計ニーズの高まりにより、これまで以上に高精度・高信頼な部品供給体制が求められています。とりわけ、回路基板やセンサー、コネクタ周辺などの樹脂製構造部品の性能や品質は、最終製品の安全性や操作感、外観品質を左右する重要な要素となっています。
その中で、射出成形・インサート成形は「精密性」「量産性」「機能統合性」を高次元で両立できる技術として、今後の製品開発・部品調達においても中心的な存在となっていくことが予想されます。また、単なる加工だけでなく、「設計段階からの相談」「材料選定」「試作から量産までのスムーズな移行」を担えるパートナー企業の存在も、調達先選定の大きな鍵となるでしょう。
根本電工株式会社は、家電部品の製造ももちろん、自動車業界や医療業界の部品製造実績も豊富で、高い品質管理基準での製造を行っているほか、生産ライン省力化機械の自社開発などによりVE提案が可能であること、成形条件等に起因して発生する歪み等の予測による設計提案等を積極的に行うことを強みにしております。
もし、家電/電子機器部品の製造について、お困りごとがございましたら、下記お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。

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